長野県北安曇郡白馬村八方にある、白馬連峰の唐松岳から東に伸びる尾根「白馬八方尾根」。1998年に長野オリンピックのアルペンスキーの競技会場になり、冬はスキー場として、夏は登山客で大勢の人で賑わう人気の場所です。
八方池へと続く登山道の八方尾根自然研究路に、食虫植物のムシトリスミレ、モウセンゴケが自生しています。標高2000mもの高地で、盛夏でもムシトリスミレの花が見られるとのことで8月頭に行ってきました。訪れた時のレポートをします。
旅のはじまり
野生のムシトリスミレ、モウセンゴケを見るのが目的だったために、自生情報のある八方尾根自然研究路を八方池の近くまで探索する予定でした。
前日に栂池自然園を見学し、八方に行き麓の民宿で一泊し、朝に出発しました。宿泊先は「白馬八方温泉まるいし」。そこから徒歩でゴンドラリフト駅の八方駅まで向かいました。

八方尾根自然研究路入り口までの道のり

八方尾根自然研究路へは、行き方が二通りあり、八方駅から行く「八方アルペンライン」、黒菱駐車場から行く「黒菱スカイライン」があります。私は八方アルペンラインを利用しました。宿泊先からゴンドラリフトの八方駅へ行き、ゴンドラに乗って兎平へ。空いていたので一人で乗れました。快適な空の旅。
八方アルペンライン 八方駅→兎平→黒菱平

兎平から「アルペンクワッドリフト」に乗り黒菱平へ。リフトは高度が低く、草が足につくほどの低さです。流れる景色の中、植物を間近に見られました。




黒菱平を降り立った時点でもう既に美しい景色。雲が低く、白馬三山が迫って見えます。これから野生の食虫植物を見る期待に背中を押され、高揚感が増しました。






黒菱平〜八方池山荘

黒菱平でさらに「グラートクワッドリフト」に乗り、八方池山荘まで。標高1820mまで来ました。

八方池山荘の横からすぐに八方尾根自然研究路に入れます。
八方尾根自然研究路の探索

自然研究路は木道コースと登山コースがあり、植物が多く見られそうな木道コースを選びました。八方尾根は蛇紋岩により植生の逆転現象が起こっている場所で、標高2300m以上でしか見られない高山植物や固有の植物が自生します。
木道コースといえども最初はゴロ石が続き、次第に木道の道が現れるようになりました。




自生するムシトリスミレ(Pinguicula)
八方池近くまで歩いたところにムシトリスミレ(Pinguicula macroceras)が生えていました。最初の株を見つけてから、しばらく何箇所かポイントがありました。








見つけられて嬉しいです。また、8月にこんな風に咲いているところを見られるなんて、来てよかったと思いました。ゴンドラとリフトで上まで上がれるので、ムシトリスミレを見るのに見やすい場所です。
自生するモウセンゴケ(毛氈苔 Drosera)
ムシトリスミレとともに同じ場所にモウセンゴケ(Drosera rotundifolia)も生えていました。






栂池自然園で花芽が出ていた株があったのに対し、こちらは花芽のある株は見当たりませんでした。数も圧倒的に栂池の方が多いです。全体的にこちらの方が若く、季節が巻き戻ったよう。
自然研究路で見た高山植物
八方池山荘から八方尾根自然研究路を歩いている間に数多くの高山植物を見ることができました。すっかりこの場所のファンです。虜になりました。こんなに美しい場所があるなんて。








































雪はあれども涼しくはなし
自然研究路の休憩所あたりに雪が残っていて、涼しい風が吹いていました。しかし、涼風を消し去るほどの激しい日差しです。ここまで休憩なしで歩いていたせいかもわかりませんが、熱中症になりそうなほどの暑さを感じ、水分補給しました。しかし、植物にとっては快適なようで、この辺りは特に高山植物が元気に育っていました。





八方池を目指して歩く
八方池に至るまでに、ムシトリスミレ、モウセンゴケ、多くの高山植物を見ることができました。最後の目的地の八方池へと向かいます。

第二ケルンの息ケルンに到着。標高2005m。息ケルンは、やすむケルンと読むようです。



標高2035 mの八方ケルンに着きました。八方池まであと少し。





八方ケルンから少し険しい道を登ると八方池が見えてきました。これが八方池。あいにく視界が悪く、白馬三山に雲がかかり、水面に映り込むこともありませんでした。残念ですが、それでも美しいです。
しかし、八方池があまりにも近いので、少し上から俯瞰して見たいと思い、分岐点に戻って、上へと登ることにしました。



八方池が見下ろせるところまで登っていくと第三ケルンがありました。ここでゆっくり八方池を眺めている人が多く、ストーブで沸かしたコーヒーを飲んだり、食事をしたりと皆さん思い思いの過ごし方をしていました。
標高2080mから見るここの景色はあまりに素晴らしく、立ち去り難いです。次はストーブとクッカー、シェラカップも持っていきたいです。



八方池山荘で食べた昼食
八方池を十分堪能した後、来た道を下り、八方池山荘まで戻りました。特にきつかったのが、八方池から第二ケルンのあたりで、登りの時はさほど思わなかった傾斜が下りの時が怖く感じます。
八方池山荘では昼食にカレーを食べました。シンプルなカレーで体に染み渡り、すぐに栄養になりそうです。山登り後のご飯は格別に美味しい!疲れた体が食べて元気になりました。


強い紫外線、失敗したこと
今回Tシャツに長袖シャツ、帽子、レギンスに短パンという服装で行きました。休憩所あたりから暑くなり、長袖シャツを腰に巻きTシャツになったのですが、これが大失敗!!見事にTシャツ焼けをしてしまいました。しかも軽い火傷のように真っ赤に。普段日焼けをしても赤くならない方ですが、山の紫外線は甘くありませんでした。1週間近く赤みが引かず、引いたと思ったら皮膚が剥け。こんなにひどい日焼けは久しぶりです。

高山病の心配
少しだけ不安があったのが高山病です。ゴンドラとリフトで一気に高度をあげるので大丈夫なのだろうかと。対策としては、睡眠と水分をしっかり摂るように心がけ、登山中はヨガの深い呼吸で歩きました。結果としてはまったく平気でした。標高が最高でも2080mで、この高度であれば問題ないようです。ただ、登り始めに、いつもより心拍数が上がるのは早い気はしました。次第に順応しましたので、これくらいです。

八方尾根食虫植物自生地探索の感想
以前から計画していた八方尾根の探索、コロナ禍でなかなか行くことができずにいましたがついに決行。ムシトリスミレ、モウセンゴケを見ることができ、大満足の結果でした。八方池に着いた時にもう少し晴れていてくれていたら良かったのですが、その絶景は、また次回の楽しみにとっておきます。
次は八方池から先の唐松岳に挑戦して、コマクサ、雷鳥に会いたいと思いました。
八方尾根へのアクセス方法・施設情報

アクセス方法
(車)関越自動車道→藤岡JCT→上信越自動車道→長野IC→国道18号線→白馬長野オリンピック道路→国道148号線
(電車・バス)東京から北陸新幹線で長野駅に行き、アルピコ交通の特急バスで白馬八方バスターミナル
(バス)新宿から高速バスで白馬八方バスターミナルまで
八方尾根施設情報
八方インフォメーションセンター(白馬八方バスターミナル) 0261-72-3066
参考文献 石原敏行『白馬八方尾根の花』ネイチャーガイド104
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