牛乳をかためる?食虫植物のユニークな利用法

食虫植物は観葉植物、園芸植物として、植物愛好家に親しまれています。
一方で、食虫植物を観葉以外の目的でも利用されてきた歴史が世界中にあります。

例を挙げると、

・チベット、中国などで、モウセンゴケを咳止めの民間薬として用いた

・ムシトリスミレを牛乳の凝固剤がわりにした

・ウツボカズラの捕虫袋をコップや食器代わりに用いた

など、ユニークな使われ方をしてきました。
食虫植物の利用法について、各種類ごとに取り上げていきます。

モウセンゴケの利用法

モウセンゴケのなかまは、原産地で民間薬として利用されてきました。

使われている種類はイシモチソウ(ペルタタ)、モウセンゴケ(ロツンデフォリア)
コモウセンゴケ(スパツラタ)、ナガバノモウセンゴケ(アングリカ)、クルマバモウセンゴケ(ブルマンニー)、
インターメディアなどです。

イシモチソウ
モウセンゴケ(ロツンデフォリア)

とくに、イシモチソウ、モウセンゴケ(ロツンデフォリア)が咳止め、鎮咳剤として多く使われています。
具体的に、以下でお話ししていきます。

中国では古くから、イシモチソウは茅膏菜(ぼうこうさい)の漢名で、漢方薬に利用されてきました。
どのように用いるかというと、全草を煎じるか酒に浸して服用、塗布。
用途としては、胃痛、赤白痢、小児疳積、打撲傷、止血、鎮痛に用いるといいます。

イシモチソウの塊根だけも漢方薬になっています。
生薬、日干しにして用いる。塗布または散剤にして内服し、
筋肉疼痛、腰痛、偏頭痛、マラリヤ、角膜混濁、打撲傷に使われています。

コモウセンゴケは地氈草、天地花、金雀梅・金雀花、地紅花・小毛氈苔の漢名で、
全草を煎じて服用されています。
風邪、肺癰(はいよう)、咳、吐血、喀血、扁桃炎、疔瘡に効果があり、
清熱し渇を消す、血を涼め淋を通すとされています。
『中薬大辞典』(小学館編 上海科学技術出版社)

コモウセンゴケ(スパツラタ)

モウセンゴケ(ロツンデフォリア)は、圓叶茅膏菜(えんようぼうこうさい)の漢名で、漢方薬になっています。
全草をそのまま、日干しにして煎じて服用。
赤痢、百日咳、気管支炎、気管支喘息に効果があるとされています。

クルマバモウセンゴケは、錦地羅(きんじら)の漢名で、
全草から花茎を取り除き、日干しにしたものを煎じて服用。
腸炎、疫痢、肺熱咳嗽、咽頭腫痛、喀血、鼻血、小児の消化不良、耳垂れ、積毒を解く効果があるとされています。
タイでも同じように民間薬として使われているそうです。
『原色中国本草図鑑』(雄渾社編 人民衛生出版社)

これらのモウセンゴケの漢方薬利用については、
食虫植物研究会会誌43号「中国における漢方薬としての食虫植物の利用」(小宮定志)
に書かれています。

また、食虫植物研究会会誌43号「モウセンゴケの薬効」(石津症)には、
以下のように、古い文献に載せられているモウセンゴケの薬用利用が紹介されています。

モウセンゴケ(種類の特定ナシ)を全草を乾燥し、痰薬とする。
(米刈達夫、木村雄四郎『和漢薬用植物』 広川書店 1948年 p.268)

・モウセンゴケ(ロツンデフォリア)を鎮咳剤、百日咳薬とする。
(賀川哲夫『標準医語辞典』23版 南山堂 1955年 p.218)

和漢方辞典だけではなく、チベットの薬草辞典にも、イシモチソウが掲載され、
全草を血液疾患、ティーパの不調を治す薬として使うと書かれています。
チベットでも薬用として使われていたのでしょう。

モウセンゴケの薬用利用はアジアだけではありません。
原産地のヨーロッパでも薬用利用されています。

スイスのハーブ入り咳止めドロップには、モウセンゴケ(ロツンデフォリア)が含まれ、
パッケージにイラストが描かれています。

同じく、食虫植物研究会誌43号「モウセンゴケの薬効」(石津症)によると、
『The Merok Index』(Seventh Edition 1960年) P.393には、
モウセンゴケ(ロツンデフォリア)の若い葉を開花時期に乾燥させたものを、
鎮咳剤として、ナガバノモウセンゴケ、ロンギフォリア※と混ぜて使うとあります。
ちなみに、ロンギフォリアはインターメディアの誤りではと石津さんは指摘しています。

『LAROUSSE MEDICAL』1952年 P.334には
モウセンゴケ(ロツンデフォリア)ロンギフォリア、インターメディアを
百日咳、肺結核の鎮咳剤に用いる。とも書かれています。

主な利用のされ方は、咳止めとしてですが、
モウセンゴケの粘液をソバカス、日焼けの治療に使ったり、
乳牛の乳房に塗ってひび割れを防いだともいいます。

ほかの利用法としては、染料という変わった使い方もあります。
多くのモウセンゴケのなかまが自生しているオーストラリアでは、モウセンゴケの塊根を染料に用いたそうです。

ウツボカズラの利用法

ウツボカズラは、さまざまな利用のされ方をしています。
大きく分けて、この4つの使われ方をしています。

・民間薬

・飲用

・美容

・道具として

薬用植物としてのウツボカズラ

ウツボカズラもモウセンゴケと同様に薬として使われてきました。

原産地のボルネオでは多岐にわたって民間薬として用いられています。

ボスチアナの未開封の消化液を目薬として。
バービジアエの未開封の捕虫袋の消化液を止血剤に使われてきました。
また、種類は特定されていませんが、糖尿病、膀胱炎にも用いられています。

消化液だけではなく、ウツボカズラの葉の絞り汁もまた、皮膚病薬、止血剤として使われています。

ラフレシアナの茎を煎じたものは、咳止め、解熱剤に使われました。
アンプラリア、グラキリスの根を煎じたものは、胃痛や赤痢の薬に使われています。

ミラビリスは、中国、香港で漢方薬としても使われています。
漢名を猪籠草(ちょろそう)、捕虫草といい、茎と葉を煎じて服用、塗布します。
用途は、咳嗽(がいそう)、百日咳、黄疸、胃痛、痢疾、水腫、癰腫(ようしゅ)、虫による咬傷(こうしょう)
打撲、尿路結石、高血圧とあります。
『中薬大辞典』(上海科学技術出版社 小学館編)

ただし、これらは医学的な証明がされておらず、効能が疑問視されています。

ウツボカズラの消化液を飲料水かわりにする

ウツボカズラの消化液(フタがまだ開いていないもの)は、
現地の人やヨーロッパの探検家の喉の渇きを癒す飲料水として
飲用されてきました。

博物学者のアルフレッド・ラッセル・ウォレスはマレー半島を調査している旅中に
飲用水が尽きて、ウツボカズラの消化液を飲んだと記録しています。
しかも、味は、酸味があり美味だと感想を記録しています。

私自身もウツボカズラの消化液を飲んだことがありますが、
若干の青臭さはあるものの、味自体は癖がなく、白樺の樹液のようでした。

美容に使われるウツボカズラ

ウツボカズラの消化液は原産地で美容液としても使われています。

ブルネイでは未開封の袋の消化液が洗眼、整髪剤に使われたり、

ローウィー、エドワードジアナ(もしかしたらマクロフィラ)の消化液が、スキンローションに、
葉と根を毛穴を引き締める収れん剤として使われたといいます。

ローウィー
エドワードジアナ

ピーリング効果もあるかもしれません。

道具として便利なウツボカズラ

ウツボカズラは、ほかの植物とは違う特殊な形状から、様々な道具に利用されています。

捕虫袋を器や食器に使う例が多く、

オーストラリアのヨーク岬半島のインジヌー(オーストラリア先住民族)の間では、
「honey jars (ミツツボ)」と呼ばれ、蜜と水を入れるのに使われています。

水を飲むためのコップとして利用されたり、
ミラビリス、ヴィーチ、アンプラリアが竹筒のように、ご飯を炊く器として広く利用されています。

ヴィーチ

このウツボカズラの袋を用いた料理については関連記事がありますので、
あわせてお読みください。

道具として用いられるのは捕虫袋だけではなく、つるも使われます。

ウツボカズラのつるは耐久性に優れ、長さもあるため、
アンプラリア、ヴィーチのつるが梱包用のロープやかごの材料にも使われているといいます。
また、竹橋のロープにも利用されることがあるそうです。

ユニークな例では、

ニューギニアで、ミラビリスがコテカとして使われたり、

カリマンタンでボスチアナが子供のおもちゃに使われたといったこともあるようです。

タバコのように、ウツボカズラの種の鞘を燃やして吸うといった使われ方もされるようです。

タヌキモの利用法

タヌキモもまた薬用植物として利用されています。

ノタヌキモ(ウトリクラリア・アウレア)は、漢名を黄花狸藻といい、
夏秋に採取し、日干しにしたものを煎じ、癰瘡腫毒(ようそうしゅどく)に用いられています。
『原色中国本草図鑑』(人民衛生出版社 雄渾社編)

ムシトリスミレの利用法

ムシトリスミレは特殊な使われ方をしています。

19世紀中頃に、イギリスのウェールズ地方で、
ムシトリスミレの葉を採取して牛乳の凝固剤に利用されていたそうです。
ノルウェーやデンマークでも同じような使われ方をされたといいます。

そのほかには、粘液をソバカス、日焼けの治療に使われたりしました。

ムシトリスミレの葉を摘んで魔女除けに使った例もあるといいます。

サラセニアの利用法

サラセニアは、アメリカの先住民族の間で、天然痘の治療薬として利用されていました。

肝、腎、胃、ぼうこうの痛みを和らげ、強壮剤、下剤、利尿剤としても使われていました。

また、サラセニアの成分には、制ガン物質が含まれることが判明したため、研究対象になっています。

ロリドゥラの利用法

枯れたロリドゥラを家の中につるして、粘液をハエトリ紙代わりにしたそうです。

ドロソフィルムの利用法

ポルトガルの南部では、ドロソフィルムの絞り汁を結膜炎の治療薬に用いたといいます。

また、ロリドゥラ同様に、小さな虫を駆除するためのハエトリ紙代わりに利用されたそうです。

まとめ

ムシトリスミレの葉を牛乳凝固剤に使ったり、
ウツボカズラの捕虫袋をごはんを炊く器に使ったり、
思いもよらない使われ方をしていて、興味がますますわきます。

これらの食虫植物の利用法をさらに調査したいと思いました。

参考文献

石津症「モウセンゴケの薬効」食虫植物研究会会誌43号 

小宮定志「中国における漢方薬としての食虫植物の利用」「食虫植物の人間生活への利用」食虫植物研究会会誌43号

堀田満編『世界有用植物辞典』 平凡社 1989年

Stewart McPherson『Pitcher Plants of The Old World vol One』

荒俣宏『花の王国4 珍奇植物』平凡社 1990年

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