食虫植物の植え替えに向く土、鉢、便利な園芸グッズを解説

食虫植物の育て方

食虫植物をはじめて育てる時、どんな土でどんな道具・鉢に植えたらいいのか迷いますよね。ここでは、食虫植物を15年栽培した中で良かったと思う園芸用土、園芸道具、鉢について解説していきます。

食虫植物はどんな土で育てる?

植物を育てる時には、その植物に向く土があります。基本的には、植物が育っているところの環境に近い土がいいです。

食虫植物は、湿性の酸性土壌に育つために、育てる時も酸性の土に植える必要があります。
酸性を好む植物は食虫植物以外にもあり、たとえば、ツツジやブルーベリーも酸性の土が好きです。

食虫植物の栽培に使う土一覧

では、具体的にどんな土がいいのでしょうか。
ここでは食虫植物栽培によく使われている土をリストアップします。そして、各用土のくわしい説明をしていきたいと思います。

・水苔

・食虫植物の土

・ピートモス

・鹿沼土

・赤玉土

・日向土

・軽石

・ココピート

・パーライト

・バーミキュライト

・富士砂

・ゼオライト

水苔(みずごけ)

食虫植物のどの種類にも向く土といえば、水苔です。

水苔

多くの栽培家が食虫植物の植え替えに水苔を使い、私自身も最も多く水苔を使っています。多くの栽培指南書にも水苔をおすすめしています。やはり水苔は食虫植物との相性がよく、生育が良いです。

はじめて食虫植物の植え替えを行う場合には、とくに水苔がおすすめです。

水苔の使い方

水苔は、食虫植物の他にも、他の園芸植物の土としても使われ、ランの植え込み材料にも使われています。乾燥水苔としてパック詰されて販売されていますので、植え替える時には、使う分だけ取って、水で戻して使います。水苔が戻るのに時間がかかるために、植え替える前に水で戻して用意しておくのがよいでしょう。乾燥水苔を水で戻す際には、消毒を兼ねて、熱湯をかけて十分に冷まして使う手もあります。私自身、この方法を教わって以来、熱湯で戻しています。

水苔の種類と選び方

乾燥水苔にはニュージーランド産、チリ産などがあります。
等級(グレード)の高い、高価な水苔の方が、繊維が長く、木の枝などの不純物・混合物が少なく、傷みにくく使いやすいです。

水苔を使う際の注意点

水苔は傷みやすいです。なぜかと言うと、食虫植物を育てる際に土を過湿にすることが多いからです。そのため、腰水栽培している場合はまめに腰水を交換したり、年に1回は植え替えをしたりして、腐敗を防ぐ必要があります。水苔からドブのような嫌な匂いがした時は傷んでいる可能性が高いので、すぐに植え替えた方がいいです。また、腰水で水が接する高さまで鉢底石を入れて、その上に水苔で植えると傷みにくくなります。植えるときはキツく詰めずに柔らかく植えます。

・腰水をまめに取り換える

・年1回の植え替えが望ましい(腐敗臭を感じたらすぐに!)

・鉢底石を下に敷く

生水苔を使う

販売されている水苔のほとんどは乾燥水苔ですが、生水苔を入手できる場合には、生水苔で植えるのもいいです。乾燥水苔で植えて、鉢の表面の植物の周りにだけ生水苔をのせたところ、食虫植物の生育がよくなりました。もちろん贅沢に生水苔単体で植えるのもよしです。

生水苔
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無調整ピートモス

ピートモス
無調整ピートモス

ピートモスは、ミズゴケなどの植物が堆積にして泥炭化したものを乾燥し、細かく砕いた土です。

販売されている食虫植物は、ピートモスで植わっていることが多いです。水を弾いてなかなか吸水してくれないので、吸水に時間をかけるか、もしくは乾燥水苔同様に熱湯をかけると水を吸いやすく、消毒にもなります。

鹿沼土や赤玉土などの砂利系の土で食虫植物を植える時にピートモスも加えると適度に水持ちがよくなって、育てるのによい感じの土になります。配分は、食虫植物の種類と育てる環境によって、調整して変えていきます。販売されているものにはpHを調整されているものもあるため、肥料なし、無調整のピートモスを使います。

ピートモスを使う際の注意点

ピートモスを使う際に水苔のように、あらかじめ湿らせておきます。吸水に時間がかかるので、熱湯もしくはぬるま湯でゆっくりと水を吸わせてから用土に使います。

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鹿沼土(かぬまつち)

硬質鹿沼土
鹿沼土

砂利系の配合土をつくるときのメインの土に使います。とくに球根(塊茎)モウセンゴケやムシトリスミレ向きでしょう。

鹿沼土は栃木県鹿沼地方で産出される土で、大粒、中粒、小粒、細粒、無選別、硬質細粒などといった種類が販売されています。サツキや多肉植物にも使われています。

食虫植物に向くのは小粒、細粒です。無選別には、粒の大きさが様々入っており、ふるいにかけて、粒の大きさを選別して、勝手のいいように使う方法もあります。

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赤玉土(あかだまつち)

赤玉土
赤玉土

鹿沼土同様に、盆栽や多肉植物など、様々な植物に使われている園芸用土です。鹿沼土主体の砂利系の配合土をつくるときの、混ぜ込み材料に使います。配合例としては、全体の2〜3割くらい混ぜ込みます。鹿沼土と同じく大粒、中粒、小粒、細粒と選別されて販売されています。
食虫植物には、小粒が向くでしょう。

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ココピート・ココチップ

ヤシの果実の外側の繊維を園芸用土したもので、配合土の混ぜ込み材料に使います。ベラボンと言う名前で商品化されているものもあります。ピートモスと同じような使い方をしますが、ココピートの方が水はけと通気性がいいです。ウツボカズラやサラセニアによく使います。

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軽石(かるいし)

軽石
軽石

砂利系の配合土をつくるときの、混ぜ込み材料、鉢底石に使います。水はけよく、通気性をよくし、根腐れを防ぎます。

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パーライト

パーライト
パーライト

パーライトは、珪藻土、真珠岩を高熱処理したものです。砂利系の配合土をつくるときの、混ぜ込み材料に使います。土壌改良によく、水持ちがよくなり、多孔質で軽いので使い勝手がいいです。
ほんの少し(1割程度)混ぜて使います。

パーライトには黒曜石、真珠岩の2種類があり、食虫植物には真珠岩パーライトを使います。物によっては微塵がよく出るので、ふるいにかけたり、微塵を取り除いてから使う方がいいでしょう。

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バーミキュライト

バーミキュライト
バーミュキュライト

バーミキュライトは鉱物を高熱処理したもので、園芸用土として広く使われています。
砂利系の配合土をつくるときの、混ぜ込み材料に使います。土壌改良によく、軽いので使い勝手がいいです。
使い方としては、ほんの少し(1割程度)混ぜて使います。また、種をまく時の土や葉挿し用の土にも使います。滅菌した瓶に播種する時の培養土にも使われることがあります。

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ゼオライト

ゼオライトは鉱物の一種で、沸石を主体とする珪酸塩鉱物をゼオライトといいます。砂利系の配合土をつくるときに、混ぜ込み材料に使います。ほんの少しだけ混ぜて使い、土壌改良、根腐れ防止になります。用いたところ、ハエトリグサの生育がよくなりました。

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日向土(ひゅうがつち)

宮崎県日向地方で産出される、弱酸性の軽石です。砂利系の配合土をつくるときの、混ぜ込み材料に使います。

鹿沼土に比べて硬く、水に浸かっても崩れにくいことから鉢底石としても使えます。また、種をまく時の土や葉挿し用の土にも使い勝手がいいです。

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富士砂(ふじずな)

砂利系の配合土をつくるときの、混ぜ込み材料に使ったり、その美しい色合いから細粒を用土の表面を覆い化粧砂に使ったりします。

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くん炭

籾殻くん炭
くん炭

砂利系の配合土をつくるときの混ぜ込み材料に使ったりします。パーライトやゼオライトのように、ほんの少しだけ(1割〜0.5割程度)混ぜます。そのため購入時に、余程鉢数が多いのでなければ容量もそれほど要りません。

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食虫植物の土(配合土)

食虫植物の土

用土の配合は慣れるまで割合が難しく、少しだけ植え替えたい時に、何種類もの土を買い揃え、用意するのは大変だと思います。

木谷美咲監修、プロトリーフより販売されている「食虫植物の土」でしたら既に用土がちょうどいいバランスで配合された状態で販売されているので、初めて植え替える方や忙しい方に特におすすめです。

食虫植物の土
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食虫植物の植え替えに向く鉢

食虫植物を植える鉢はプラスチック鉢、素焼き鉢、駄温鉢(だおんばち)、陶器鉢などを使います。色々使ってみた結果、プラスチック鉢が管理の点、持ち運びの楽さから使い勝手がいいと思いました。観賞には陶器鉢も素敵です。

プラスチック鉢を使う場合はスリットがある鉢がいいです。色は黒か深緑色のもの。深鉢は根が張る場合にも対応でき、鉢内の温度が急に上昇しないのでダメージが少ないです。

ハエトリソウ、モウセンゴケの仲間の場合は3〜4号鉢。
株の大きさにもよりますがサラセニアは4号〜5合鉢くらいが目安になります。

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食虫植物を植え替えるのにあると便利な園芸グッズ

食虫植物に限らず、これまで植物の植え替えをした時にあると便利だった園芸グッズをご紹介します。以下のものを用意しておくと植え替え時にスムーズかつ効率的に植え替えすることができます。

・土入れ

・ピンセット

・園芸ハサミ

・トレイ

・菜箸

・手ろくろ

・鉢底網

・園芸ラベル

・マスク

これらの園芸グッズについて詳細を解説していきます。

土入れ

苗や鉢植えの土を鉢に入れるための道具です。小さなスプーンやスコップでもいいのですが、食虫植物を育てるのに適した鉢は1.5号から4号の小さい物が多く、砂利系の用土を入れる時に、土入れを使うとスムーズに植え替えを行うことができます。

土入れはプラスチック、ステンレスの両方を使っていましたが、ステンレス製が断然使いやすかったです。大きさは三点セットで販売されていることが多く、一番細いサイズをよく使っています。

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ピンセット

ピンセット

枯れ込んだり、痛んだ葉、古い根を取り除くのにピンセットが使い勝手がいいです。用土の表面が荒れている時に直したり、生水苔を株元に置くときにも活躍します。

ピンセットはいろいろなタイプがありますが、ルーチェ型のピンセットが使いやすかったです。菌やウイルスがうつってしまわないように消毒して使います。

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園芸ハサミ

園芸ハサミ

枯れ込んだり、痛んだ葉、古い根を取り除くのに使います。

ピンセットだと他の葉まで傷めてしまったり、株にダメージがありそうな繊細な部分を切ったり、枯れ込んだ葉を切るのに便利です。ピンセット同様に消毒して使います。

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トレイ

新しい用土を入れておくのに使います。砂利系の用土を配合したり、水苔を水で戻すのにも使います。

00均のお店で売っているプラスチックの書類を入れる長方形である程度深さがあるトレイが使いやすいです。プラスチックのボウルでも大丈夫。トレイは食虫植物の鉢を入れておき、腰水で栽培するのにも便利です。

菜箸

砂利系の用土をスムーズに根の周り、鉢の底の方に落とすのに使います。また、ナメクジやヨトウムシなど、食虫植物を食害する虫を捕まえるのにも使えます。もちろん割り箸でも代用できますが、菜箸の方が使いやすかったです。

手ろくろ(手回しろくろ)

他の方から教わったのですが、陶芸の器を作るのに使うろくろを植物の植え替えに流用します。ろくろは360度回転するため、鉢を置いたまま360度回せるのがとても便利。植え替えの作業がグンと捗ります。

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鉢底網

スリット型の鉢には使わないのですが、素焼き鉢や陶器の鉢で鉢底に大きな鉢底穴が空いている場合は、鉢底網を穴の大きさより少し大きいくらいに、ハサミでカットして使います。

植え替える先の新しい鉢の鉢底穴にあらかじめ敷いておきます。

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園芸ラベル

園芸ラベル

食虫植物の学名を書いて鉢の土の端に挿します。人によっては入手先や入手日、植え替え日、管理番号を書くこともあります。

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マスク

食虫植物の植え替えをするときに、細かな微塵や粉塵を吸ってしまって喉の調子をしばらく悪くしてしまったことがありました。それ以来、植え替えの時にはマスクを必ずするようにしています。コロナ禍からはマスクをする機会が増えましたが、植え替え時には必ずマスクをしています。

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食虫植物の植え替えに使う園芸用土・園芸用品を販売している場所

・園芸資材を販売しているオンラインショップ

・ホームセンター

・園芸店

以上の場所で買うことができます。ただし、まとめ買いすると重くて、持ち運びに難儀することもあります。持ち運びの楽さを考えても、オンラインでの購入、もしくは重量の軽い水苔、用土が既に配合されている食虫植物の土はオススメです。

食虫植物の植え替えを振り返り

これまで食虫植物や他の植物を上手に栽培する方々に多く会いましたが、栽培が上手い方に必ず共通していたのが「植え替えが上手」「植え替えがこの上なく好き」ということでした。今からもう10年以上も前の話ですが、ある有名な栽培家の方は「植物の植え替えだけして暮らしていたい」と語っていました。

また、ある方は「植え替え時が総決算」ともいい、これまでの栽培がうまくいっていたかわかるとのことでした。

残念ながら、私は植え替えがそれほど好きではありません。しかし、下手ながらも植え替えをし終え、植え替え後に調子がよくなるのを見ると嬉しい気持ちになりました。これから園芸、そして食虫植物栽培を始める方の参考に少しでもなれば幸いです。

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