愛知県豊明市ナガバノイシモチソウ自生地一般公開に参加した話

食虫植物コラム
ナガバノイシモチソウ捕虫の様子

愛知県の豊明市沓掛町小廻間には、食虫植物のナガバノイシモチソウの紅花の自生保護地があり、普段は立ち入り禁止になっていますが、花が咲く時期(夏期の週末)に、大狭間湿地の自生地と合わせて一般公開されて見学することができます。特に紅花のナガバノイシモチソウは豊橋市と豊明市でのみ確認されている希少種で、自生地は愛知県の天然記念物、大狭間湿地は豊明市の天然記念物指定を受けています。この希少な食虫植物の自生地の一般公開に申込み、参加して観察してきた時のことを書きます。

ナガバノイシモチソウとはどんな植物?

渡瀬遊水池のナガバノイシモチソウ(白花)

そもそもナガバノイシモチソウとはどんな植物でしょうか。

ナガバノイシモチソウはモウセンゴケの仲間で、葉に生えた腺毛から粘液と消化液を出し、粘液に絡めとられた虫を葉の上で消化し、吸収する【粘りつけ式の罠をもつ】食虫植物です。茎が立ち上がり、大きいものだと草丈30センチほどにも及びます。糸のような細く長い葉が特徴で、ナガバノイシモチソウの和名を持ちます。

分布域は広く、アフリカ、インド、オーストラリア北部、東南アジア、日本と分布し、自生地(主に湿地)では群生する姿が見られます。

花の色はピンクと白などがあり、関東でも、渡瀬遊水池、成東・茂原などの白い花のナガバノイシモチソウが自生する地はありますが、紅(濃いピンク)色のナガバノイシモチソウは、国内では愛知県(豊明市、豊橋市)でしか確認されていません。

茎の頂部ではなく、茎の途中から花茎を出し花を咲かせるのも特徴の一つです。

ナガバノイシモチソウ白花の写真

ナガバノイシモチソウの白い花 茨城県小美玉市

ナガバノイシモチソウ紅花の写真

ナガバノイシモチソウの紅花 愛知県豊明市

ナガバノイシモチソウ紅花の自生保護地の一般公開日はいつ?

夏季の週末に一般公開されます。公開日は時期近くなると豊明市がホームページで発表します。

2020年の公開日は、8月1日(土曜日)、2日(日曜日)、3日(月曜日)、9月12日(土曜日)、13日(日曜日) 午前9時~11時30分でした。

参考:豊明市のナガバノイシモチソウ・大狭間湿地の一般公開に関するページ

ナガバノイシモチソウ紅花の自生保護地を見学

私が行ったのは2017年8月。東山動植物園の園長、名古屋港のワイルドフラワーガーデンブルーボネットの園長を勤められた森田高尚さんと奥様のご案内で自生保護地観察へと行きました。到着時間の9時過ぎには、すでに地元の中高生や単身、親子連れの見学者で賑わい、保護地前を囲む柵の外からも見学する人の姿が見えました。保護地前に受付をするブースが設けられているので、そこで名前を記入し、パンフレットをいただき、保護地内に入ります。保護地前の前には看板が立ち、ナガバノイシモチソウに関する情報や写真が貼られ、啓蒙活動が行われていました。

ナガバノイシモチソウ紅花の自生保護地前の看板
ナガバノイシモチソウの説明

ナガバノイシモチソウ紅花の自生保護地の様子

自生保護地は244平方メートルほどしかなく、狭い区画に厳重に柵で囲われています。盗掘や悪戯を予防するためでしょう。中には木道がしかれ、その上から観察することができます。敷地内は狭いので、多くの見学者で木道をすれ違うこととなりました。

ナガバノイシモチソウ自生保護地前と木道

コンパクトな湿地内には多数のナガバノイシモチソウが群生していました。

素晴らしい群生です。

こじんまりとした敷地に一斉にナガバノイシモチソウが生える姿は美しく、葉に生えた腺毛から粘液を出しているため、葉の色が淡い緑色になり、輪郭がぼんやりとソフトになり、まるで黄緑色の煙か霧がただよっているかのように見えます。

ナガバノイシモチソウ
ナガバノイシモチソウ群生
ナガバノイシモチソウの花
ナガバノイシモチソウの花

開花タイミングでの一般公開で、おかげさまで美しい花を見ることができました。

植物のコンディションも良く、葉からたっぷりと粘液を出し、太陽の光に反射して輝いていました。ちなみにモウセンゴケの英名はSundew=太陽の露(しずく)という意味を含みます。まさに太陽の露らしく、光に当たって輝いていました。

この美しい姿を見られて、関東エリアから参加して本当に良かったと思いました。気になっている方にもぜひおすすめです。

虫(モンシロチョウ)を捕まえているところも見ることができました。

ナガバノイシモチソウ捕虫の瞬間(写真)

ナガバノイシモチソウ捕虫の様子

羽が生えている虫はモウセンゴケの粘液に引っかかりやすく、蝶のほか、ガガンボやハエ小型のハチが捕まっているのをよく見かけます。捕まった虫は消化液で溶かされて次第に小さくなり、黒い粒のような点になります。

ホザキノミミカキグサ

自生保護地では、ナガバノイシモチソウと一緒にホザキノミミカキグサもたくさん咲いていました。

ホザキノミミカキグサ

写真中央の淡い薄紫色の花がホザキノミミカキグサです。ホザキノミミカキグサはタヌキモ科の食虫植物で地中の根茎に捕虫嚢をつけます。花はごく小さく、ガクの部分に入る白い縦線の模様が特徴的です。

ナガバノイシモチソウとホザキノミミカキグサ

食虫植物以外の植物(サギソウ)

自生保護地前では食虫植物だけではなくサギソウやシラタマホシクサもたくさん自生していました。

ナガバノイシモチソウ自生保護地前のサギソウ

このような素晴らしい自生地で木道からじっくりと本格的に撮影している方も見受けられました。

自生保護地見学で気になったこと・注意点

真夏の一番暑い時期で、しかも湿地で湿度が高く、屋根がないので、晴れている日だと日差しがきつく、本当に暑かったです。

本当に暑いので熱中症にお気をつけください。

愛知県豊明市の8月〜9月の最高気温は30℃を超える日が多く、気温が高い日には40℃近くにもなります。湿地はさらに湿度が足されるので、体感温度も上がります。

短時間でも熱中症の危険があります。つい夢中になって長時間滞在しがちですが、熱中症にくれぐれもご注意ください。前日にはよく睡眠を取り、こまめに水分をとり、帽子や日傘で日差しをガードしましょう。凍らした飲み物や寒冷タオルを持参した方が良さそうでした。

お子さん連れやご高齢の方はくれぐれもお気をつけて。

大狭間湿地を見学する

ナガバノイシモチソウ紅花の自生保護地から1Kmほど離れたところに大狭間湿地はあります。

同乗させていただき車で移動しましたが、公開日に自生保護地と大狭間湿地を往復するシャトルバスが運行するため、これを利用して移動することも可能です。もちろん歩いていくことも可能な距離です。この時期、暑いですが。

大狭間湿地は2,290平方メートルもの広大な湧水湿地で、開けた湿地の中に木道が敷かれています。

大狭間湿地

食虫植物は点在するように生えているのが見られました。木道に沿って歩いているとすぐに見つけられるため、観察は容易です。

花が咲いているモウセンゴケがありました。

大狭間湿地のモウセンゴケ

ぬかるみ、水が多くなったエリアではミミカキグサの大群生に出会えました。ミミカキグサもまたホザキのミミカキグサ同様にタヌキモ科の食虫植物で日本国内に自生し、地中に伸びた根茎に捕虫嚢をつけ、地中の虫などを捕まえます。間、間にモウセンゴケも一緒に生えています。

大狭間湿地のミミカキグサ

少し離れたところにトウカイコモウセンゴケが生えている一画がありました。

トウカイコモウセンゴケ

小石が堆積し瓦礫のようになった場所で、若干渇き気味の場所。以前、兵庫県のトウカイコモウセンゴケの自生地を見たときも似たような瓦礫地でした。

トウカイコモウセンゴケの株中央から花芽が上がっていますが、花後でした。

大狭間湿地のトウカイコモウセンゴケが生える場所

この日の見学会のことは中部復建のオフィシャルページ【中部の「土木文化」見てある記】に森田高尚さんが執筆されています。

http://chubu-fukken.com/blog-entry-376.html

ナガバノイシモチソウ(紅花)自生地・大狭間湿地で見られる食虫植物の種類まとめ

世界中でおよそ600種類が確認されている食虫植物。その内、22種類の食虫植物が日本全国に自生しています。

とはいえ、どこにでも生えているわけではなく、食虫植物は、日当たりの良い湿地や沼地の貧栄養の土で育つため、生える場所は限られています。

日本全国にはさまざまな食虫植物の自生スポットがあり、愛知県の豊明市の小廻間、大狭間湿地もその一つなのです。

ナガバノイシモチソウ(紅花)

ナガバノイシモチソウ自生地(小廻間)の食虫植物の種類まとめ

ナガバノイシモチソウ自生地では、これらの食虫植物が自生していました。

・ナガバノイシモチソウ(紅花)

・トウカイコモウセンゴケ

・ミミカキグサ

・ホザキノミミカキグサ

大狭間湿地に自生する食