何度でも行きたい!千葉県山武市成東・東金食虫植物群落

食虫植物コラム

食虫植物は日当たりがよい貧栄養の土地で好むため、自生できる場所も特殊で限られています。日本に自生する8種類もの食虫植物の野生の姿を観察できる場所があります。それが、千葉県の山武市と東金市にまたがって広がる成東・東金食虫植物群落。成東・東金食虫植物群落はJR総武本線成東駅より、2.5Kmほど離れたところに位置する湿原です。ここへは幾度も訪ねていて、何度も行きたくなるような楽しい場所です。これまでの探訪体験について、食虫植物の説明を交えつつレビューしていきます。

成東・東金食虫植物群落とは?

総武本線の成東駅からおよそ2.5Km先に位置する湿原です。32,000m2ほどの広大な面積。

成東・東金食虫植物群落地

食虫植物、ノハナショウブ、ウメバチソウ、ヤマラッキョウなど希少な植物を含む400種もの植物がここに自生しています。

1920年に日本で初めての天然記念物指定を受けました。その時の名称は「成東食肉植物産地」だったそうです。それが1978年に今の名称成東・東金食虫植物群落」に変更になりました。

成東・東金食虫植物群落地

「成東・東金食虫植物群落を守る会」によって野焼きや掘り取ったススキの土落とし、抜き取り作業、植生調査などの保護活動が行われ、自生できる環境が保たれています。

JR成東駅から成東・東金食虫植物群落へ向かう

成東・東金食虫植物群落は山歩きをすることなくアクセスできる自生地です。
JR総武本線の成東駅からは2.5kmと距離があるため、車かバスで行きたいところです。私は車、タクシー利用、徒歩で行きました。タクシーは駅前のタクシー乗り場からで所要時間は5分ほど。
徒歩では30分ほどかかりました。

住宅街、農地を通り、群落地に着くとまず駐車場、そして青い屋根で山小屋風の管理棟、木の大きな看板が見えます。農地に囲まれた広大な湿地に管理棟がぽつりと建ち、他に目立つ建物もないのですぐにわかります。また行く道すがら食虫植物群落地の方向を示す標識もありました。

成東東金食虫植物群落管理棟
成東・東金食虫植物群落地看板
成東・東金食虫植物群落地掲示

成東・東金食虫植物群落内を見学する

まずは群落地の入り口に立つ管理棟に入り、用紙に名前と連絡先(団体の場合は代表者)を記入し受付を済ませてから、群落地を見学します。

4月〜10月には、管理棟に成東・東金食虫植物群落を守る会の方が在駐され、成東・東金食虫植物群落を守る会の方がボランティアで群落内を解説案内をしてくださいます。

2022年現在、コロナの影響により4月〜8月の9時から16時までのみ見学可能。案内は中止されています。

群落地は湿地になり、木道のようなコンクリートの歩道が敷かれていて、歩道から脇に生えている食虫植物を覗き込むように見学します。食虫植物が生えている場所にはプラカードが挿してあり、はじめて食虫植物を見る人にも親切な案内があります。

成東・東金食虫植物群落地歩道
成東・東金食虫植物群落地歩道

歩道脇に生える食虫植物を見ることができます。食虫植物のことをよく知らなくても、成東・東金食虫植物群落を守る会の方が見頃の他の植物と合わせて食虫植物の見所エリアに連れて行ってくださり、解説してくれます。群落の状況や歴史も教えてくださり、とても勉強になりました。

イシモチソウ

成東・東金食虫植物群落に自生する食虫植物

成東・東金食虫植物群落で観察できる食虫植物は8種類です。

モウセンゴケ

粘りつけ式のわなをもつモウセンゴケの仲間です。放射状に広がる葉は丸く、多数の腺毛が生えて虫を捕まえる粘液を出します。冬には冬芽を作って越冬します。白い花を咲かせます。

花の時期:6月〜7月

モウセンゴケ Drosera rotundifolia

コモウセンゴケ

小型のモウセンゴケの仲間。葉に生えた腺毛から出る粘液で虫を捕まえます。葉はヘラ型。モウセンゴケに比べて葉身と葉柄の境目が曖昧です。花色はピンクと白がありますが、ここのはピンク色の花です。

花の時期:5月下旬〜7月

コモウセンゴケ Drosera spathulata

イシモチソウ

地下部に球根(塊茎)を作るモウセンゴケの仲間です。出始めはロゼットで次第に茎が立ち上がり、草丈15〜20センチほどになります。葉は盾型。茎の頂部に花を咲かせます。

花の時期:5月末〜7月

イシモチソウ Drosera peltata

ナガバノイシモチソウ

モウセンゴケの仲間で一年草です。茎が立ち上がり、糸のように細い葉を互生につけます。茎の途中から花茎を出し白い花を咲かせます。他のモウセンゴケやイシモチソウなどのモウセンゴケの仲間に比べて、芽が出るのが遅く、暑い時期に生長します。

花の時期:8月〜9月

ナガバノイシモチソウ Drosera indicaの出始め
ナガバノイシモチソウ

ミミカキグサ

吸い込み式のわなをもつ食虫植物です。地中の浅いところに糸状の地下茎を伸ばし、地表には細い葉を出します。地下茎、葉に袋状のごく小さい捕虫嚢をつけ、虫を吸い込んで捕まえます。

花の時期:7月〜9月

ミミカキグサ Utricularia bifida

ムラサキミミカキグサ

小型のミミカキグサの仲間です。ミミカキグサ同様に、地地表には細いへら形の葉を出し、地中の根茎についた捕虫嚢で虫を捕まえます。白花のムラサキミミカキグサもあります。

花の時期:8月〜9月

ムラサキミミカキグサ Utricularia yakusimensis

ホザキノミミカキグサ

吸い込み式のわなをもつミミカキグサの仲間です。花に4、5本の白い縦線の模様が入ります。

花の時期:6月〜9月

ホザキノミミカキグサ Utricularia caerulea

イヌタヌキモ

水生のタヌキモの仲間です。水中を浮遊し、細い茎に葉が互生に着きます。葉に捕虫嚢をつけ、吸い込み式で虫を捕まえます。水上に茎よりもしっかりとした太さの花茎を出し、黄色い花を咲かせます。冬は芽だけになり越冬します。

花の時期:8月〜9月

イヌタヌキモ Utricularia australis

食虫植物群落の食虫植物の見頃の時期まとめ

食虫植物を見られるのは、6月〜9月です。8月の終わり頃から次第に葉が枯れ込んできます。おすすめは、7月初旬にモウセンゴケ、コモウセンゴケ、イシモチソウを見に、もう一度8月初旬にナガバノイシモチソウを見に行くことです。

花の時期

6月〜7月 モウセンゴケ、コモウセンゴケ、イシモチソウ、ミミカキグサ

8月〜9月 ナガバノイシモチソウ、ムラサキミミカキグサ、ミミカキグサ

食虫植物群落の食虫植物が捕虫するところ(写真)

木道に沿って見学していると、イシモチソウなどの粘りつけ式の罠をもつ食虫植物が虫を捕まえているのを見ることができます。

イシモチソウ捕虫写真

食虫植物群落見学時に注意すること

①熱中症に注意

群落地は屋根がなく、太陽を遮る物がないために照り返しが強く、湿地で湿度が高いために、アウトドアに慣れていない方は特に熱中症に注意です。テレビ番組の撮影協力で群落地を訪れたときに、ナビゲーター役の壇蜜さんが熱中症になりかけていました。前日はよく睡眠をとり、帽子を被り、こまめに水分をとりましょう。

②木道を降りない。採集しない

見学の時の注意点としては歩道から降りないことと植物の採集をしないこと。植物の採集は禁止されています。皆で大切に見ているものですから、モラル的にも採集はNGです。

③マムシに注意

食虫植物群落にはマムシが生息しているので注意です。木道脇にいるのを教えてもらったことがあります。くれぐれもお気をつけください。