【食虫植物】サラセニアの基礎知識

食虫植物のきほん

背の高い筒のような葉が特徴のサラセニア
まるで煙突がならんでいるかのようです。

ハエトリグサのように動くわけでもない、形も直線的であまり面白みがないと最初は思っていました。
ところが、サラセニアは、知れば知るほど魅力を理解できるようになる奥深い植物です。
どこか気品があり、風格があり、食虫植物の中でも玄人好みです。

私がはじめて、サラセニアの魅力を知ったのは、三重県の伊勢花しょうぶ園に行った時でした。
伊勢花しょうぶ園は花菖蒲のほかに、サラセニア、ハエトリグサの生産販売農家さんで、
広大な敷地で何千株ものサラセニアを栽培されていました。

辺り一面見渡す限りサラセニア。
あまりに美しい。まさにサラセニアの海です。

サラセニアは種類によって葉の色、形、模様が異なり、(これについては後述します)
大量の株が一堂に集まると、色とりどりでそれはもうキレイなんです。

葉の形や模様、色合いを愛でるのが好きな人ははまってしまうと思います。
万年青やギボウシ、シダが好きな方はハマるかもしれません。

サラセニアのおどろきの生態〜捕虫方法

サラセニアの筒のような体は葉です。
この葉は袋状になり、上部にフタがついています。
袋状の葉の表側(前面)には縦に羽がついています。
この葉のことを「捕虫葉」(ほちゅうよう)といいます。

フタの表や裏、入り口や袋の上部から出る蜜で虫をおびき寄せます。
この蜜をゆびでさわるとベタつきます。

サラセニアの捕虫葉は、ただの袋ではなく、獲物を捕まえるためのわなであり、
落とし穴です。

蜜に誘われてやってきた虫が、袋の入り口で足を滑らせて中に落ちるのをじっと待ち構えています。
うまくわなにかかり、虫が袋の中に落ちると、今度ははいあがることができません。

なぜなら、サラセニアの袋の内側には下向きに毛が生えていて、
よじのぼろうとしても毛に邪魔されて、のぼることができないのです。

袋の底には、三分の一くらいまで消化液がたまっています。

落ちた虫は、消化液と細菌によって消化されて、栄養として吸収されます。

この捕虫方法については、以下の記事でもくわしく説明しています。

サラセニアの捕虫葉に落ちる虫は多く、底の方に虫がたまって黒くなっているのが
葉の外側からも少し透けて見えます。

捕まる虫はいろいろで、甲虫、ハエ、ハチなどが入っています。
カエルや小さなカナヘビが入ることもあります。

サラセニアは多年草で、日本では春から秋に生長し、冬に生長が鈍くなり休眠します。

春、新芽が出る前に花芽が伸び、つぼみがふくらみ、花を咲かせます。

花は、花茎が下向きに曲がり、ランプのように下向きに咲きます。
花の形がユニークで、ガクの間から花びらを垂らします。花の中央には板のような花粉板がつき、
その板に花粉が落ちます。

受粉すると種がつき、種でふえます。

サラセニアの学名と発見史について

サラセニアは学名で、Sarraceniaと表記します。

和名はヘイシソウ。ヘイシソウのヘイシは瓶子を指し、酒器に使われた壺をあらわします。
サラセニアの姿形を瓶子に見立てて、和名がつけられたのでしょう。
英名はpitcher plant(ピッチャープラント)

サラセニアの名前は、フランス領北アメリカのカナダ人医師ミシェル・サラザンに由来しています。
サラザンは、18世紀のはじめに、サラセニアの標本を、
フランスの著名な植物学者ジョセフ・ピトン・トゥルヌフォールに寄贈しました。

後年、トゥルヌフォールはサラザンに謝意をこめて、サラセニアと名付けたのです。

サラセニアが命名される以前にも、サラセニアとされる植物の記録があります。
もっとも古い記録は1570年刊のマティアス・ド・ロベルとピエール・ピアの著書
『Nova Stirpium Adversaria』に見ることができます。
彼らの本には、サラセニアとされる植物画が掲載されています。

次の記録は、植物学の始祖であり、医師のカロルス・クルシウスの著書。
「Rariorum Plantarum Historia」(1601年)に、サラセニアの図譜が掲載されています。

しかし、この頃はまだサラセニアは食虫植物だとは考えられていません。

1754年に刊行された『カリフォルニア、フロリダ、バハマの自然史』にて、
著者の植物学者のマーク・カテスベイは、サラセニアの種類の違い(フラバ、ミノール、プルプレア)について
記述はしていますが、中にたまった消化液に対して、
「葉の中にたまっている水は、多くの虫を助け、避難させるのに役立っているのでは」と、
誤解した考察を書いています。

捕虫について言及されたのは、1815年。
ジェームズ・マックブライドが著書の中で指摘しました。

この発見史については『Pitcher Plants of the Americas』(Stewart Mcpherson著)
くわしく書かれています。
ご興味がありましたら、ぜひお読みください。

サラセニアはどこに生えている?原産地について

サラセニアの分布は、アメリカとカナダです。
多くのサラセニアは、テキサス、フロリダ、ニュージャージャージー、テネシーに分布しています。

日当たりが良い、開けた湿原に生えています。
生えている場所は栄養に乏しく、マツやブナが生えるようなところです。

サラセニアの種類 原種と変種、交配種、園芸品種

サラセニアには、原種が8種あります。

筒状の捕虫葉を根茎から出すことに変わりはありませんが、
種ごとに葉の形、模様、色合いが異なり、とてもユニークです。

サラセニアの原種

・alata アラタ

・flava フラヴァ

・leucophylla レウコフィラ

・minor ミノール

・oreophila オレオフィラ

・psittacina プシタキナ

・purpurea プルプレア

・rubra ルブラ

サラセニアの変種、交配種、園芸品種

さらに、これらの種の変種、交配種、園芸品種もあります。
サラセニアは種と種の間でも交配できるために、両方の種の特徴がわかる交配種(園芸品種)があり、
観葉植物としてすばらしい姿形になっているものも多くあります。

フラヴァの変種ルブリコーポラ
レウコフィラ×コーティー(プルプレア×プシタキナ)×レウコフィラ”ルビージョイス”
フラヴァの変種オルナタ
スカーレットベル
プルプレアの亜種ベノーサ
京鹿の子

サラセニアの観察・入手方法

サラセニアを見たり、買ったりするにはどこがいいでしょうか?
以下の場所で見たり、購入したりできます。

・植物園
・食虫植物愛好家団体の集会
・ホームセンター、園芸店、アクアショップ
・食虫植物専門店

植物園の食虫植物展示

植物園の常設展示や夏季の食虫植物展でサラセニアを見ることができます。
また、食虫植物展では販売会も同時に行われるので、サラセニアを購入できることも。

兵庫県立フラワーセンターのサラセニア展示、
箱根湿性花園のサラセニア展示、とてもすばらしく、また必ず見に行きたいです。

兵庫県立フラワーセンターのサラセニア展示
兵庫県立フラワーセンターのサラセニア展示(温室内)

食虫植物愛好家団体の集会

全国の食虫植物愛好家団体が定期的に公民館などで集会を催しています。
ここの販売会や分譲会で購入できることもあります。

・日本食虫植物愛好会
・食虫植物研究会
・東海食虫植物愛好会
・食虫植物探索会

ホームセンター・園芸店・アクアショップでサラセニアを購入するには

4月中旬から秋くらいにかけて、ホームセンターや園芸店でサラセニアの苗が販売されています。

その年によって、取り扱われる種類が変わることもあります。
よく見かける種類が、レウコフィラ、スカーレットベル、プルプレアです。

オザキフラワーパーク
プロトリーフ
ヨネヤマプランテイション
Gardens
charm

食虫植物専門店でサラセニアを購入するには

いろいろな種類、めずらしい種類のサラセニアを探したいのであれば、食虫植物専門店で購入するのがよいです。

ヒーローズピッチャープランツ
Y’s Exotics山田食虫植物農園
大谷園芸
リベラルファーム

ヤフオク!でも出品されていますので、気になる種類があれば探してみてはいかがでしょうか。

サラセニアの値段はどれくらい?

だいたい1000円〜5000円の価格帯です。
めずらしい種類になると、さらに高い場合もあります。

サラセニアを買うときに気をつけること

葉がしっかり伸びていて、ぴんと張りがあり締まっている株がいいです。

葉に皺が寄っていたり、葉がねじれてよれていたり、弱々しい株は避けましょう。
茶色く枯れ込んでいるのも×です。

サラセニアは病気や栄養障害で葉がよじれてしまうことがあります。
虫から病気をもらいやすいので注意が必要です。

サラセニアの育て方(枯らさないコツ)

サラセニアを購入したら、その年はそのまま鉢をいじらず、
屋外の日当たりの良い場所に置き、植わっている土が乾かないようにたっぷり水やりをします。

サラセニアは、ほかの多くの食虫植物と同じく乾燥にとても弱いです。
湿生植物のため、土が乾くと枯れてしまいます。
水を切らさないように注意です。

冬の時期が来たら、サラセニアの生長がゆるやかになり、休眠します。
この時期に植え替えや株分けを行います。

植え替えは古い土を取り除き、新しい鉢の底に鉢底石を四分の一ほど敷き、新しい土で植えます。
用土は水苔か、根回りに水苔を巻き、ピートモス+鹿沼土+ベラボンなどを用います。

植え替えを終わったらたっぷり水やりをし、屋外の日当たりのよい場所に置きます。

冬の時期、土が凍ってしまうほど寒い場所だと、
株にダメージを受けるために、保温するなどの保護が必要です。

春、新しい葉が出てくる時期に、しっかり日にあてると株が締まって元気に育ちます。

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